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【実務のリアル】遺言書が必要な人ランキングTOP7|「うちは大丈夫」が一番危ない理由

「うちは分けるほど財産がないから」
「家族仲が良いから、話し合いで解決できるはず」

実務の現場にいると、こうした言葉をよく耳にします。しかし、実際に相続が始まった後、手続きが止まってしまうのは、実はこうした「ごく普通の、仲の良いご家庭」であることが少なくありません。

なぜなら、相続は「感情」だけでなく「法律上のルール」で動くからです。

今回は、遺言書がないことで手続きが難航したり、親族間の負担が増えたりしやすいケースを、実務上の観点からランキング形式でまとめました。


第1位:お子さんのいないご夫婦

(「全財産をパートナーへ」という願いは、一筆なしでは叶いません)

意外かもしれませんが、実務上、最も遺言の優先度が高いのがこのケースです。

  • 現実の壁: お子さんがいない場合、相続人は配偶者だけではありません。亡くなった方の親、親が他界していれば「兄弟姉妹(またはその子供である甥・姪)」も法的な相続人になります。
  • 手続きが止まりやすいポイント: 遺言がないと、残された配偶者は、普段交流の少ない義理の兄弟たちと「遺産分割」の話し合いをしなければなりません。実印をもらうために時間を要したり、自宅を確保するために代償金の支払いが必要になる場合があるなど、手続き・心理的負担が重くなりがちです。
  • プロの視点: 兄弟姉妹が相続人になるケースでは、兄弟姉妹に「遺留分(最低限の取り分)」がないため、「配偶者にすべてを」という遺言は非常に強力です。ただし、亡くなった方の親(直系尊属)が存命で相続人になる場合は、親には遺留分があるため、その点も考慮して設計するとより安心です。

第2位:再婚されており、前妻・前夫との間にお子さんがいる

(「今の家族」と「過去の家族」がテーブルを囲むことになります)

現在の生活がどれだけ幸せでも、法律は「過去の親子関係」を平等に扱います。

  • 現実の壁: 現在の配偶者と、前妻・前夫との間のお子さんは、法律上はいずれも相続人になり得ます。 ※なお、現在の配偶者の「連れ子」は、養子縁組をしていない限り相続人にはなりません。
  • 実際に起きがちなつまずき: 相続手続きには、相続人全員の合意が必要です。もし一人でも反対したり、連絡が取れなかったりすれば、銀行口座の解約すらできません。顔も合わせたことがない相手と、感情的な対立が起きやすいデリケートなケースです。
  • プロの視点: 遺言で「誰に何を渡すか」を明確に指定しておくことは、現在の家族を守るためだけでなく、疎遠なお子さんをトラブルに巻き込まないための「最後の優しさ」でもあります。

第3位:内縁(事実婚)のパートナーがいる

(「長年連れ添った事実」に、法律上の相続権はありません)

婚姻届を出していないパートナーは、法律上「親族以外の第三者」として扱われてしまいます。

  • 現実の壁: どれだけ長く介護を共にし、生活を支え合っても、遺言がなければ内縁のパートナーが財産を受け継ぐ権利は一切ありません。
  • 手続きが止まりやすいポイント: 亡くなった方の自宅が親族の名義になり、名義の状況によっては、内縁のパートナーが住み慣れた家を使い続けられないリスクが生じます。
  • プロの視点: 財産を遺すには「遺贈(いぞう)」という形での遺言が基本になります。内縁のパートナーの生活基盤を守るための、もっとも確実な手段の一つです。

第4位:主な財産が「自宅(不動産)」だけで、分けにくい

(家は包丁で切り分けることができません)

「うちは普通のサラリーマン家庭だから」という方が一番陥りやすい罠です。

  • 現実の壁: 財産が「実家1つと少しの預金」という場合、子供たちが平等に分けるには、家を売って現金にするか、誰かが他の兄弟に「代償金(現金)」を支払うしかありません。
  • 実際に起きがちなつまずき: 同居して親を支えてきた子供が「そのまま住み続けたい」と願っても、他の兄弟が「法定相続分を現金で欲しい」と言えば、家を手放さざるを得ない状況に追い込まれることがあります。
  • プロの視点: 特定の資産の行き先を決めておくことはもちろん、「なぜそう分けるのか」という想い(付言事項)を書き添えることで、兄弟間の納得感は大きく変わります。なお、特定の人に不動産を集中させる場合は、他の相続人の遺留分にも配慮した設計にしておくと、よりトラブルを防げます。

第5位:特定の相続人以外(子供の配偶者、孫、知人)に財産を遺したい

(「お世話になったから」という口約束に、法的な力はありません)

「介護を頑張ってくれた長男の嫁に」「可愛い孫に学費を」という想いは、そのままだと反映されません。

  • 現実の壁: お嫁さんや孫は、原則として法定相続人ではありません。
  • リスク: 遺言がない場合、相続人たちが「善意で」財産を分けてくれない限り、希望は実現しません。むしろその希望が親族間の火種になってしまうことさえあります。法改正により、介護に尽力した親族が金銭を請求できる『特別寄与料』という制度もできましたが、家庭裁判所での手続きや厳重な証拠が必要で、ハードルが高いのが実情です。最初から遺言で『遺贈』する形にしておくことが、感謝を確実に伝える唯一の近道です。
  • プロの視点: あなたの感謝の気持ちを、法的に有効な「ギフト」に変えるのが遺言書です。

第6位:会社経営者・個人事業主の方(事業承継)

(経営権の分散は、事業の終わりや事業の停滞を意味する可能性があります。)

事業用資産や自社株が複数の子供に分散されることは、将来の「お家騒動」の種を蒔くようなものです。

  • リスク: 後継者でない子供が株を持つことで、意思決定が滞り、事業運営に支障が出るケースがあります。
  • 対策: 後継者に事業用資産を集中させることは、従業員や取引先の安心にも繋がります。

第7位:おひとり様(身寄りが全くいない)

(あなたの歩んでこられた証を、自分で決めた先へ)

相続人が一人もいない場合、家庭裁判所の手続き(相続財産清算人の選任など)を経て、最終的に財産が国庫に帰属する可能性があります。

  • 選択肢: お世話になった友人、愛するペットの世話を頼みたい人、あるいは社会貢献活動をしている団体への寄付(遺贈寄付)。あなたの財産の「使い道」を自分で決めることができる最後のチャンスです。

まとめ:遺言書は「家族への最後の配慮」

「仲が良いから大丈夫」という言葉を、私たちは何度も聞いてきました。しかし、いざ相続が始まると「仲が良いこと」と「権利の主張」は別問題になるのが現実です。

遺言書は、残される家族が迷わないための「地図」であり、あなたの想いを届ける「メッセージ」です。もしこのランキングに一つでも心当たりがあるなら、まずは専門家に今の状況を話してみることから始めてみませんか?

監修者 飯島亮介
監修:飯島 亮介
保有資格 司法書士 / FP(1級ファイナンシャル・プランニング技能士)
2011年から大阪で相続・成年後見業務を中心に活動する司法書士。累計100件以上の後見業務に携わった豊富な経験を活かし、複雑で分かりにくい法的手続きを、専門用語を使わず丁寧に解説します。

⚠️ 免責事項

本記事の内容は、公開日時点の法令・実務慣習に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。相続手続きは個別の事情により判断が異なるため、本記事の情報のみに基づいて行われた判断や行動によって生じた結果について、当サイトおよび監修者は一切の責任を負いません。重要な判断を伴う手続きの際は、必ず司法書士等の専門家へ個別にご相談ください。

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