「実家を相続したので、そろそろ不動産の登記手続きを進めよう。」と考え始めたとき、初期の段階で行っていただきたいのが法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)の確認です。
これは、いわば実家の「履歴書」のようなもの。いつ、建てられ、どのようにローンを完済し、誰が名義人になっているのか。実家がたどってきた「歩み」を事実で教えてくれるのが、この登記事項証明書(登記簿謄本)です。

1. なぜ「実家の履歴書」を確認する必要があるのでしょうか?
実家の整理をスムーズに進めるためには、家族全員が同じ「状況」を共有していることが不可欠です。登記事項証明書を確認することで、以下の「経歴」が明確になります。
- 現在の登記名義人: 法務局に登録されている、現在の名義人は誰か。もし、祖父や祖母の名義のままなら、集める戸籍謄本等や手続きの内容が増えることを覚悟し、この時点で専門家への相談・依頼を推奨いたします。
- 権利の状況: 住宅ローンなどの担保(抵当権)や、将来の権利を予約する「仮登記」などが残っていないか。もし、残っている場合は抹消できるか調査する必要が生じます。会社が既に破産して消滅していたり、まったく記憶のない個人名が抵当権者として記載されている場合は手続きが困難化するおそれがあります。
- 建物の状態: そもそも建物が「登記」されているか(未登記建物ではないか)。法務局に登録がない建物の場合、相続登記の前提として表示登記が必要になります。
登記上の情報と、相続人が抱いている認識がズレていることは珍しくありません。まずは事実関係を検証するための「土台」を作りましょう。
2. 事前準備:不動産を特定する「地番・家屋番号」を確認しましょう
ここで注意が必要なのが、普段使っている「住所(住居表示)」と、不動産を特定する「地番・家屋番号」は体系が異なるという点です。一致する場合もありますが、基本的には別物として確認を進めましょう。
確実な地番の調べ方
まずは、手元にある以下の書類から「経歴のヒント」を探してみてください。
- 固定資産税の納税通知書: 毎年春に届く書類です。土地の「地番」や建物の「家屋番号」が記載されています。※ただし、未登記建物の場合は空欄になっていることがあります。
- 権利証(登記済証・登記識別情報通知): 最も確実な情報源です。
- 売買契約書や重要事項説明書: 購入時の詳細なデータが残っています。
資料が見当たらない場合は「地番照会」を
もし手元に資料がなくても、実家の住所がわかっていれば大丈夫です。管轄の法務局(地番・家屋番号の照会の係があります。)へ電話し、「住所から地番の確認をお願いします」と伝えてみてください。さらに「土地の上にある建物の家屋番号も教えてほしい。」と伝えた際、もし、「建物の登記が見当たらない」という回答であれば、未登記建物の可能性が高いという、非常に重要な事実が判明します。
最新の制度: 相続人の方が網羅的に調べたい場合は、名義人となっている不動産を一覧で把握できる「所有不動産記録証明制度(令和8年2月から開始)」を利用するのも有効な手段です。
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3. 取得方法は3つ。自分に合ったものを選びましょう
- 法務局の窓口で取得: 職員さんに相談できるので、初心者の方や「未登記の疑いがある」といった不安がある場合におすすめです。
- オンラインで請求: 地番が確定しているなら、手数料が安く、自宅に届くので効率的です。多忙で平日の昼間に動きにくい方にもおすすめです。
💻 オンラインなら「かんたん証明書請求」がおすすめ
オンライン申請の中でも、専用ソフトのインストールが不要で、ブラウザだけで完結するのが「かんたん証明書請求」です。
- 手数料: 郵送受取なら1通 520円(窓口に行くより80円お得。交通費も考えるともっとお得。)
- 利用時間: 平日 8:30 ~ 21:00
- メリット: スマホやPCから、自宅にいながら請求・支払いが可能
※法務省の「登記・供託オンライン申請システム」へ移動します
【注意】 まれに「改製不適合物件」といって、コンピュータ化されていない不動産が存在します。その場合はオンラインでは取得できないため、窓口や郵送での対応が必要になります。
- 郵送で請求: 法務局が遠方にあり、インターネット操作が苦手な場合に利用します。多忙で平日の昼間に動きにくい方にもおすすめです。
💡 補足:内容を確認するだけなら「登記情報提供サービス」
「とりあえず今の名義や状況を確認したいだけ」という場合は、ネット上で閲覧できる登記情報提供サービスも便利です。
手数料は1件331円と最安ですが、認証(ハンコ)がないため、裁判所や一部の公共機関等への提出書類としては使えない可能性がある点にだけ注意しましょう。
4. 取得時のポイント:情報の漏れを防ぐためのチェック
法務局の窓口で「交付申請書」を書く際は、以下の点に気をつけましょう。
- 「全部事項証明書」を選択する: 一部の情報だけでなく、過去の経緯を含めた「全部」が必要です。
- 「共同担保目録」も必ず付ける: 「全部(抹消を含む)」にチェックを入れてください。ここに、自分たちが把握していなかった「私道」の地番が記載されていることがあり、重要な手がかりになります。
- 「地図(公図)」もセットで: 実家が「旗竿地(通路の奥にある土地)」や、周りを他人の土地に囲まれた「袋地」のような場合は、公図も一緒に取っておくと安心です。
5. 書類が届いたら確認すべき「権利のサイン」
届いた書類を手にしたら、以下の箇所を丁寧に読み解いていきましょう。
① 権利部(甲区):名義人の住所・氏名
一番最後に記載された「登記名義人」を確認しましょう。もし名義人が亡くなった祖父母のままであれば、代々相続登記がされていなかったことを意味します。この場合、収集する書類が膨大になるなど手続きが複雑化しやすいため、司法書士への相談を推奨します。
また、「仮登記」や「買戻特約」といった所有権以外の記載がないかも見ておきましょう。これらは将来の売却時に抹消が必要になるため、重要なチェック項目です。
② 権利部(乙区):住宅ローンなどの借金情報
ここでは「抵当権」などの担保権を確認します。記載内容に下線が引かれ、その後に「〇番抵当権抹消」という文字が見つかれば、その借金は完済され、登記も消されていることがわかります。逆に、完済しているはずなのに抹消登記がされていない「休眠担保権」が見つかることもあります。
6. まとめ:事実をもとに、落ち着いて検討を始める
登記事項証明書は、あくまで「法務局に登録されている現在の情報」を写したものです。
この「実家の履歴書」をもとに、
- 名義を現在の実態に合わせる手続き(相続登記)が必要か?
- 完済済みの古い権利(休眠担保権など)が残ったままになっていないか?
といった課題を一つずつ整理していきましょう。 実家の整理は、何かを急いで決めることではありません。「今、どういう状態なのか」を正しく知ることから、すべてが始まります。
本記事の内容は、公開日時点の法令・実務慣習に基づいた一般的な情報の提供を目的としています。相続手続きは個別の事情により判断が異なるため、本記事の情報のみに基づいて行われた判断や行動によって生じた結果について、当サイトおよび監修者は一切の責任を負いません。重要な判断を伴う手続きの際は、必ず司法書士等の専門家へ個別にご相談ください。




